WANIMA「やってみよう」が国民的応援歌となった真相と原曲の秘密
正月三が日のお茶の間を席巻したテレビCMの鮮烈な衝撃から歳月が流れた今も、WANIMAの「やってみよう」は世代やシーンを問わず愛され続けています。春の旅立ちや入学シーズン、学校の運動会、さらには企業の決起イベントやスポーツの応援席に至るまで、この痛快なメロディックパンクを耳にしない季節はありません。
誰の耳にも馴染みのある童謡をベースにしながら、なぜこれほどまでに強烈な熱量を持って聴く者の胸を揺さぶるのか。本稿では、名作CMとの出会い、原曲に隠された音楽史的背景、緻密に計算された歌詞の意味と制作秘話を、現場の取材視座と音楽心理学の両面から深く掘り下げます。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:童謡「ピクニック」を痛快なメロディックパンクへと再構築し、CMの枠組みを超えて社会に定着した国民的アンセム。
- 要点2:「正しいより 楽しい」「倒れるなら 前のめり」というフレーズが、失敗を極度に恐れる現代人のプレッシャーを解き放つ。
- 要点3:運動会ダンス、ギター初心者の入門曲、カラオケの起死回生ソングとして、多用途に機能する汎用性の高さがロングヒットの核心。
【誕生秘話】童謡「ピクニック」が疾走パンクへ変貌を遂げた舞台裏
この楽曲の起点となったのは、松田翔太さん演じる桃太郎、桐谷健太さん演じる浦島太郎、濱田岳さん演じる金太郎らが織りなす「au 三太郎 CMソング」の正月企画でした。2017年の元日に突如としてオンエアされたCM「春のトビラ・やってみよう」篇は、放送開始と同時にSNSを中心に爆発的な話題を呼び起こします。画面の中で縦横無尽に駆ける三太郎たちのコミカルな挑戦と、圧倒的なドライブ感で鳴り響くスリーピースサウンドが見事な化学反応を起こした瞬間でした。
ここで多くのリスナーを驚かせたのが、原曲の存在です。ベースとなっているのは、世界中で歌い継がれてきたイギリス民謡であり、日本では「丘を越え 行こうよ 口笛吹きつつ」のフレーズで広く知られる童謡「ピクニック」でした。誰もが幼少期に歌ったことのある牧歌的な旋律を、WANIMAはBPM180超の高速ビートとラウドなギターリフで一新しました。関係者の証言によると、制作現場では「単なる既存曲のカバーにとどまらず、泥臭く汗を流すWANIMA固有の体温をいかに注入するか」という点に細心の注意が払われたといいます。
熱狂的な反響を受け、ファン待望のフルバージョン音源は2017年3月8日に配信リリースされました。さらに翌2018年1月17日には、彼らの金字塔となるメジャー1stフルアルバム『Everybody!!』の2曲目として堂々収録されます。サブスクリプションサービスの普及とともに、短尺CMの枠を飛び越えたフル試聴の需要が急増し、ストリーミング再生回数は瞬く間に億単位の記録へと到達していきました。

歌詞の意味を徹底解剖|「正しいより楽しい」に宿る行動の哲学
WANIMAの「やってみよう」がこれほどまでに支持される最大の推進力は、ボーカル&ベースのKENTAさんが紡ぎ出した卓越したリリックにあります。童謡の親しみやすい節回しを踏襲しつつ、そこに流し込まれたメッセージは、現代人が無意識に抱える「正しさの強迫観念」に対する小気味よい宣戦布告でした。
特にリスナーの心を射抜いたのが、「正しいより 楽しい 正しいことばかり言っていたら息が詰まる」という痛烈なフレーズです。デジタル社会の進展によって可視化された他者の視線や、一度のミスも許されないような減点主義の風潮に対し、この言葉は「生きる実感」を取り戻すための強烈な免罪符となりました。善悪や損得ではなく、「自分がワクワクするかどうか」を行動基準に据え直すことの尊さを、ストレートな言葉で肯定しているのです。
さらに後半部で提示される「倒れるなら 前のめり」「失敗も 思い出」という人生哲学は、挑戦に伴う痛みを恐れる人々の背中を力強く叩きます。精神医学やアドラー心理学においても、「行動の動機を承認欲求から自己決定へとシフトさせること」が精神的自立に不可欠とされていますが、この楽曲はそうした専門理論を極めて簡潔かつ情熱的なロックの言葉へと翻訳してみせました。聴き手がフルで音源を試聴した後に覚える爽快感は、単なるリズムの心地よさだけでなく、心の重荷を下ろしたことによるカタルシスに起因しています。
【楽曲データ分析】原曲との比較検証と名曲の現在地
なぜ「やってみよう」は、企画モノのCMソングという出自を超えて普遍的なスタンダードナンバーになり得たのでしょうか。原曲である伝統的な童謡「ピクニック」と、WANIMAによる再構築版の構造的な差異、そしてバンドの代表作群における立ち位置を客観データから比較検証します。
| 項目 | WANIMA「やってみよう」 | 原曲「ピクニック」(童謡) | 編集部の見解・分析 |
|---|---|---|---|
| テンポ(BPM) | 約180(高速ツービート) | 約105〜115(中庸な行進曲) | 約1.6倍の高速化により、行進曲からアドレナリンを刺激するパンクへ昇華。 |
| ボーカル最高音(地声) | hiA(ラ)周辺 | mid2E(ミ)程度 | 男性が喉を開いて張り上げる限界付近。カラオケでの熱唱感と一体感を演出。 |
| 主要コード進行 | E, B, C#m, A(I-V-vi-IV進行) | C, G7, F(基礎的三和音) | 王道ポップパンクのコード進行。ギター初心者でも比較的容易に演奏可能。 |
| WANIMA人気曲ランキング | 堂々のTOP3常連 | — | 「ともに」「シグナル」と並び、バンドのパブリックイメージを決定づけた代表格。 |
| 主たる受容シーン | 学校行事、カラオケ、部活動応援 | 保育園・幼稚園での遊道歌 | 幼児教育の枠組みを脱し、小中高生から社会人までを鼓舞する実用歌へと拡張。 |
データを見れば明らかなように、WANIMAは原曲の持つ普遍的なメロディラインを担保しながらも、リズムとキー設定によって「大人が全力で感情を爆発させられるロックナンバー」へと完全に再構築しました。WANIMAの人気曲ランキングを検証しても、フェス会場でのキラーチューンである「THANX」や、ストレートなメッセージが光る「ともに」と並び、この楽曲は常に上位へ名を連ねています。タイアップの枠組みを超え、バンド自身のシグネチャーソングとして定着している事実が数字からも読み取れます。

【現場検証】運動会ダンスからギタリストの登竜門まで広がる実態
全国の教育現場や音楽スタジオに目を向けると、「やってみよう」が驚くほど多様な形で生活に根付いている実態が浮かび上がります。
まず顕著なのが、全国の小学校や幼稚園・保育園における「運動会ダンス」の定番化です。原曲が童謡「ピクニック」であるため、低学年の児童にとってもリズムが把握しやすく、振付を覚えやすいという利点があります。さらに、曲中に散りばめられた「ラララ」の合唱パートや、間奏の力強いハンドクラップが、グラウンド全体の保護者や観客を巻き込む装置として極めて優秀です。取材に応じたある小学校の教諭は、「走るのが苦手な子どもも、この曲が流れると自然と笑顔になって体を動かせる。ポジティブな連帯感を生む力は群を抜いている」と証言しています。
また、プレイヤー層における支持も見逃せません。軽音楽部や独学で楽器を始めたばかりのプレイヤーにとって、「やってみよう」のギターコード進行は格好の練習台となっています。レギュラーチューニングの基本ダイアトニックコード(E、B、C#m、Aなど)を軸にしたパワーコード主体の構成は、Fコードなどの難所で行き詰まりがちなビギナーでも短期間で弾き語りやバンド演奏の快感を味わえます。YouTubeや動画投稿アプリ上では、弾いてみた動画や初心者向けの解説コンテンツが今なお投稿され続けています。
カラオケシーンにおいても、この曲の存在感は唯一無二です。男性ボーカルとしては高めの「hiA」前後の音域を要求されるものの、サビ前のタメやシンガロングのパートが多いため、多少ピッチが乱れても勢いとグルーヴで場を最高潮に盛り上げることができます。「歌唱の上手さ」ではなく「場の一体感」を共有したいビジネスパーソンや学生にとって、失敗のリスクが極めて低いセレクトとして重宝されているのです。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
広く親しまれている一方で、インターネット上や一部の音楽ファンの間では、本作に対して一定の誤解や過小評価が存在することも事実です。ここでは代表的な2つの論点について検証します。
1つ目の誤解は、「既存の童謡を速く演奏しただけの安易な替え歌ではないか」という見方です。しかし、実際の楽曲構造を仔細に分析すると、その指摘がいかに的外れであるかが分かります。原曲のメロディラインを引用しているのは全体の約半分に過ぎず、BメロやCメロにあたる劇的な展開、ブレイクの配置、KO-SHINさんの緻密なオクターブ奏法、そしてFUJIさんの叩き出すタイトなツービートのコンビネーションは、極めて高度なポップパンクの文法に則って設計されています。親しみやすさの裏に隠された、百戦錬磨のライブバンドとしてのアンサンブル技術こそが、数多の企画ソングと一線を画す生命線なのです。
2つ目の誤解は、「WANIMAの楽曲の中でも単純すぎて聴き飽きやすい」という言説です。確かに短尺のサビだけを切り取れば極めてキャッチーですが、フルコーラスを通して聴くことで、楽曲は「挑戦の奨励」から「弱さの受容」、そして「明日への覚悟」へと段階的にグラデーションを描きます。ただ単に明るいだけでなく、どこか哀愁を帯びたメロディが差し挟まれることで、過剰なテンションの押し付けにならず、リスナーの日常に寄り添う耐久性を獲得しています。

【プロの結論】音楽社会学から読み解く「処方箋」としての受容基準
音楽が個人のメンタルヘルスや集団の意思決定に与える影響を長年追究してきた視点から見ると、WANIMAの「やってみよう」は現代社会における極めて有効な「情動調整のツール」として評価できます。しかし、あらゆる応援歌がそうであるように、受け手の精神状態によってその効能は大きく変化します。
この楽曲を積極的に生活へ取り入れるべき人は、「頭で考えすぎて一歩が踏み出せない人」「失敗を恐れて選択肢を狭めている人」です。挑戦のハードルを極限まで下げ、「たとえ転んでも思い出になる」と語りかける言葉は、膠着した現状を打破する強力な起爆剤となります。新規プロジェクトの立ち上げや、試験・面接の直前など、アドレナリンを注入して自らを奮い立たせたい局面において、これ以上のブースターはありません。
一方で、慎重な距離感を保つべきなのは、「すでに極度の心身疲労を抱えて限界を迎えている人」です。エネルギーが枯渇している状態でハイテンポかつポジティブなメッセージを浴びると、心理的なリアクタンス(反発)が生じ、「やってみようと思えない自分」を責めてしまう二次的ストレスに繋がりかねません。そうした疲弊期には、無理にアクセルを踏み込むのではなく、まずは静寂やメロウな音楽で休息を取ることが先決です。自分のメンタルの充電状態を客観的に見極めた上で活用することこそが、この楽曲の真価を十全に引き出す賢明な向き合い方と言えます。
【wanima やっ て みよう】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:原曲のイギリス民謡・童謡「ピクニック」と歌詞はどう違うのですか?
A1:原曲の童謡は「丘を越え 行こうよ 口笛吹きつつ」のように、青空の下で仲間と楽しくハイキングへ出かける情景を描いた牧歌的な内容です。対してWANIMAの「やってみよう」は、原曲のメロディ骨格を活かしつつ、歌詞を完全にオリジナルで書き下ろしています。「正しいより楽しい」「誰も見たことのない花を咲かせよう」など、困難を恐れずに新しい扉を開く人生の応援歌として再構築されています。
Q2:ギター初心者でも本当に弾けますか?使用するコードの難易度は?
A2:十分に演奏可能です。基本キー(Eメジャー)において、使用される主なコードは「E・B・C#m・A」の4つが中心であり、パワーコードを使用すれば指2本のフォームを平行移動させるだけでサビのバッキングを弾くことができます。アコースティックギターで弾き語りをする場合も、カポタストを活用することで基本的なローコードのみで演奏可能です。
Q3:アルバム『Everybody!!』以外でフル音源を聴くにはどうすればいいですか?
A3:Apple Music、Spotify、Amazon Music、LINE MUSICなどの主要な定額制音楽配信サービス(サブスクリプション)において、単曲配信およびアルバム収録曲としてフル試聴が可能です。また、YouTubeのWANIMA公式アーティストチャンネルでは、躍動感あふれる公式ミュージックビデオがフル尺で公開されており、いつでも高音質な映像とサウンドを体験できます。
まとめ:失敗を肯定するエネルギーが切り拓く明日
童謡「ピクニック」の持つノスタルジーと、メロディックパンクの爆発的な疾走感を融合させたWANIMAの「やってみよう」。この楽曲が年月を経ても色褪せない最大の理由は、時代が変わっても揺らぐことのない「失敗への恐れ」を温かく包み込み、軽やかに笑い飛ばしてくれる包容力にあります。
「正しいこと」ばかりを求められ、息苦しさを感じがちな日々の中で、ふと立ち止まりそうになったとき。イヤホンから流れるこの泥臭くも晴れやかな歌声は、私たちが本来持っていたはずの「まず動いてみる」という純粋な好奇心を、これからも力強く呼び覚ましてくれるはずです。 (出典: wanima やっ て みよう(Yahoo!ニュース))